哲学の道と疏水

     疏水は 春は花びらにうずもれるのだった。その花びらの上にまた花びらが舞い落ち、
二重にも三重にも重なり合ってゆるやかに流れていった。

十二、三町の長い流れが そのころには桜の花びらにおおいつくされ、
水の面をひとところも見せなかった。
桜の花が流れつくすと 季節は夏に移ってゆくのだった。       

田宮虎彦著 「琵琶湖疏水」より