池の向こうに母屋を望む

 庭に面して建てられている母屋は近代の数奇屋建築ですが、
玄関を入り手前8畳の間は網代や丸太を配した数寄屋造り、奥の8畳は格調のある書院造と趣を変えています。
部屋の周囲には縁側がめぐらされ欄干が設けられています。
縁側のすぐ下まで池泉が入り込み、太陽の光線が水に反射して陽炎のように廊下の天井に映える風情や、
時をおいて聞こえてくる「ししおどし」ののどかな響きが「夢の浮橋」の世界へと誘います。
谷崎の小説「夢の浮橋」ではこの屋敷が舞台となり、五位庵という名で部屋や庭の様子が美しく描かれています。