大津絵の筆のはじめは何仏  芭蕉

 元禄4年(1691)大津で正月を迎えた芭蕉は、
仏画を題材とすることが多い画師達に、
仕事始めは何を描くのだろうかと素朴な気持ちを詠んでいます。
「鬼の寒念仏」法衣をまとい念仏を唱える優しげな鬼の姿は、偽善者を風刺しています。
この大津絵の「鬼の寒念仏」の石像は、
句碑と並んでJR膳所駅南の茶臼山芭蕉会館にあります。

 近江をこよなく愛した芭蕉は、生涯に残る980の句の内、約1割の89句を湖南で詠んでいます。
蕉門36俳仙と呼ばれる門人のうち、千那、尚白、曲翠ら近江の門人が12名を占めています。

貞亨2年(1685)3月、芭蕉は野ざらし紀行の途次、
初めて訪れた大津で近江八景唐崎の句を詠み、
元禄3年(1690)3月には、「行く春を近江の人と惜しみけり」の句を残しています。

 芭蕉が愛した湖畔の風景 正面比叡山

  

      大津絵 鬼の寒念仏     辛崎の松は花より朧にて(唐崎)       行く春をあふみの人と惜しみける(義仲寺)